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    「まだなかなかでせう。永いこつてすよ」

    「私も眠れなくて夜中に一度湯へはいるのですが、なんだか気味が悪るござんしてね。隣の湯へ溪から何かがはいって来るような気がして――」

    「うん」

    「あれなら、私の方からいゝやうにしときます」

    「はい、あの、切れて居りますが」

    徳次は、その云ひ慣れない「往診」といふ言葉を口の中で物をころがすときのやうに珍しげに云つて見た。何か特別な響きがあつた。その時、急に彼は房一が医者だといふことを思ひ出していた。

    「いや、いや」

    「きさま!あれほど云つたぢやないか。何んだこの真似は!」

    「はあ、見て参ります」

    「おい、ビールは冷やしてあるかい」

    房一はさつきから自然と聞いてはいたが、事は初耳だつた。

    恐らく、房一も他の場合にはこれと似たりよつたりの動作をやるにちがひない、たゞ道平に向ふとこんなに易々とできないのだ。

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